-002- Engineer Trousers / Diary.4

2025.6.12

ー限定された目的の為の造形に強く惹かれる。それが局所的であれば尚の事ー

長い時間、椅子に座ってパソコン作業をする友人の体勢から着想を得てデザインした形。

椅子に座った(膝を曲げた)状態が通常、立った(膝を曲げた)状態が異常。

システムエンジニアの彼にとって、立ちの状態より座りの状態の方が圧倒的に時間が長い、そう考えると彼にとってはこれが通常の形ではないだろうか。と言い聞かせている。

もちろん通常の形のパンツで、座ることに何の影響もない。その方が生地もロスが出ないし、縫いやすい、作成の時間も短い、何よりマス向けで商業的である。そうして今回のパンツが作られたというわけだ。

採用した生地は綿100のダック地。

生地を決める上で重要視したことは、1,リラックス感がない事、2,無機質感が強いこと。

1に関してはあえて説明するまでもないが、柔らかかったり動きやすい生地で今回の形を作る意味がないからだ。本当に座りやすいパンツならスウェット地の方が良いに決まっている。あくまで座った形から着想を得て着想を得てデザインしているだけ。

2に関してはうまく説明するのが難しい。生地を大まかに分けていった時に、まず柄物の生地と無地の生地。これはもちろん無地の方が無機質。

次に生地の組成。これは何を持って無機質かどうかを分けるのかというと、織りの主張の無さや生地の光沢だ。平織りの方が綾織りより無機質な気がする。マットな方が艶やかな生地より無機質だ。

最後は生地の色。無作為の100人に『無機質な生地の色は?』とアンケートを取ると多分グレーが8割以上を占めるだろう。この架空のアンケート結果は、少し前にコンクリート打ちっ放しの無機質カフェが流行ってしまった弊害だろう。ネイビーこそ無機質、無機質こそネイビーである。時代の変遷とともに無機質な色は変わりゆくと思っている。日本における美の感覚と同じだ。

長々と書き連ねたが、理論的になるべくしてネイビーのダック地になったというわけだ。

正直ここまでのプロセスが最も重要であって、パンツの細かなデザインや要素は説明するに足らない、自分で自分を納得させるためのパズルをするみたいに決まっていった。

今回の膝を曲げたような立体的な形は全く無い形ではないが、片足の筒を3パネルで構成しているため外側にシームが無いという点は、こと”座る”という点に注目してデザインしたからこその功績だろう。

椅子に座る人の足に注目すると、ザリガニ視点で見る自分の爪みたいになっている。膝部分で外に膨らんで足先に向けて若干内に入ってくる。絵に描いた座り体勢が見られるのは、面接中くらいなもんだ。この座り方をする時膝部分はパンツの外側のシームに干渉する。つまりはひざ下の生地が思い描いた形を作れない。試行錯誤の結果、外側のシームをなくすことにした。

完成したものを実際に履いて椅子に座ってみたところ、思惑は完全に当たっていた。

これがこのパンツの正しい履き方であると言わんばかりに、大きなシワひとつなく座ることができている。

改めて冒頭の一文を再確認させられるプロダクトとなった。